質問:kö のカタカナ表記は「キョ」の方がよいのでは?
「kö のカタカナ表記を『コ』としているが,『キョ』のほうがよいのでは」というコメントを頂きました。
ご指摘は母音 ö のカタカナ表記に関するものです。日本語には ö という「円唇」母音はありませんので,カナ表記では何らかの音で代用する必要があります。フィンランド語では,「母音調和」 という規則があり (「文字と発音」5-6ページご参照ください),口を丸めない母音 (非円唇母音) と丸める母音 (円唇母音) がペアを作ります。『語学王フィンランド語』『ゼロから話せるフィンランド語』では,以下の表のとおりのカナ表記を行い,表記に一貫性をもたせました:母音 a/ä には[ア],o/ö には[オ]というカタカナ表記を常に使い,u/y のみそれぞれ[ウ]/[ユ]と区別して表記する。つまり,『語学王フィンランド語』『ゼロから話せるフィンランド語』では y のみ ヤ行音 でカナ表記されています。
母音↓ 子音→ |
非円唇母音 | 円唇母音 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| p | t | s | k | p | t | s | k | |
| a/ä [ア] | pa [パ] | ta [タ] | sa [サ] | ka [カ] | pä [パ] | tä [タ] | sä [サ] | kä [カ] |
| o/ö [オ] | po [ポ] | to [ト] | so [ソ] | ko [コ] | pö [ポ] | tö [ト] | sö [ソ] | kö [コ] |
| u [ウ] vs. y [ユ] | pu [プ] | tu [トゥ] | su [ス] | ku [ク] | py [ピュ] | ty [テュ] | sy [シュ] | ky [キュ] |
ご指摘のようにkö を「キョ」と表記した場合,その表記を一貫させようとすると,母音 ö を y と同様に ヤ行音 で表記することになります。例えば pö, tö, sö はそれぞれ「ピョ」,「テョ (ティョ?)」,「ショ」となりますが,少なくとも tö はかなり読みにくいように感じられます。さらに,syötkö? 「(あなたは)食べる?」は「シュヨトキョ」,Töölö 「(地名)」は「テョーリョ」と,現実の発音とはかなり異なる表記になってしまうのです。
現在出版されているフィンランド語の入門書のカナ表記を見てみると,ö を場合によって「エ」や「オ」など違ったカナで書き分けているものもあるようです。『語学王フィンランド語』では,カタカナの表記をできるだけ一貫したものとすること,また発音をできるだけ見易くすること,という観点から,o/ö には[オ]という同じカタカナ表記を使い,「k の後の ö は特別に kö 「キョ」と書く」といった措置は行なわないことにしました (ほぼ同様のカナ表記は,松村一登先生が書かれた 『エクスプレスフィンランド語』 (白水社, CDつき版 2002年刊) に見られます)。その結果,mökki 「別荘」は[モッキ]と,työ 「仕事」は[テュオ]となり,実際にいくつかの書籍で見られる「ミョッキ」 「テュヨ」とはなりません。この原則により,例えば上述の syötkö?,Töölö もそれぞれ[シュオトコ],[トーロ]とシンプルに読みやすくなるように思いますが,いかがでしょうか。
いずれにしても,カタカナ表記はあくまでも発音の「目安」に過ぎず,現実の発音とは多かれ少なかれ乖離しています。ö は日本語にはない母音ですので,音声CD (別売りです) などを参考にしっかり発音をマスターしていただきたいと思います。
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